近年、コストを抑えてスマートに事業をスタートしたい方から注目されている「バーチャルオフィスでの開業」。
自宅住所を公開せずに法人登記ができる、全国どこにいても拠点を持てるなど、自由度の高さが支持されています。
一方で、「本当にバーチャルオフィスで開業しても大丈夫?」「手続きや注意点は?」といった不安や疑問を持つ方も少なくありません。
本記事では、バーチャルオフィスを活用した開業のメリットや手続きの流れ、注意点からおすすめサービス、さらに実際の体験談まで、最新情報をもとに徹底解説します。
これから開業を検討している方や、バーチャルオフィスの導入を迷っている方はぜひ参考にしてください。
バーチャルオフィスで開業するとは?
バーチャルオフィスとは何か?
バーチャルオフィスとは、実際に物理的なオフィススペースを借りずに、ビジネス用の住所や電話番号などのサービスを利用できる仕組みです。主に都市部の一等地に事業用の住所を持つことができるため、個人事業主やフリーランス、スタートアップ企業など幅広い層から注目されています。
物理的なオフィスを構えずに済むため、家賃や光熱費といった固定費を大幅に削減できるのが大きなメリットです。また、自宅の住所を公開せずに法人登記や名刺、ホームページにビジネス用住所を記載できるため、プライバシーの確保や信用力の向上にもつながります。バーチャルオフィスには、住所貸し、郵便物の受け取り・転送、電話応対代行、会議室の利用など、さまざまなオプションサービスが用意されており、必要に応じてカスタマイズできるのも特徴です。
近年では、テレワークやフリーランス人口の増加、スタートアップの隆盛といった時代の変化に合わせて、バーチャルオフィスのニーズはますます拡大しています。実際に法人登記が可能なサービスも増え、従来のレンタルオフィスやシェアオフィスとは異なる、現代の働き方に適した新しいオフィス形態として定着しつつあります。
バーチャルオフィス開業のメリット・デメリット
バーチャルオフィスを利用して開業する最大のメリットは、コスト面と柔軟性です。初期費用やランニングコストが圧倒的に安く、月額数千円から事業用住所を持つことができます。これにより、スタートアップや副業、個人事業主でもリスクを抑えてビジネスを始めることが可能になります。
また、都心の一等地住所をビジネスで使用できるため、企業イメージや信頼性の向上にも役立ちます。自宅住所を名刺や登記簿に記載するリスクを回避し、プライバシーも守れます。さらに、郵便物の転送や電話応対代行、会議室の一時利用といった付加サービスも充実しており、必要なサービスだけを選択できるのも強みです。
一方、デメリットとしては、物理的な拠点を持たないことによる信頼性や実体性の問題が挙げられます。一部の金融機関や取引先は、バーチャルオフィスの住所であることを理由に法人銀行口座の開設や契約を断る場合があります。また、実際のオフィススペースや作業場所がないため、スタッフが複数いる場合や対面での打ち合わせが多い業態では不便を感じることもあるでしょう。
加えて、業種や登記内容によっては、バーチャルオフィスでの法人登記や営業許可が認められない場合があります。例えば、宅建業や士業、古物商など一部の業種では、物理的な事務所要件が求められることがあるため、事前の確認が必須です。
従来の開業方法との違い
従来の開業方法では、物理的なオフィスや事務所を賃貸したうえで、住所や電話番号を法人登記や名刺、ホームページに記載するケースが一般的でした。この場合、オフィス賃料や敷金・礼金、オフィス家具や設備投資など、開業に際して大きな初期費用・ランニングコストが発生します。さらに、通勤や管理業務など日常的なオフィス運営にも時間と労力がかかることが多く、特に個人事業主や小規模事業者にとってはハードルとなっていました。
バーチャルオフィスを利用した開業は、こうした従来型の物理オフィスに比べて圧倒的に費用や手間を抑えられるのが最大の違いです。加えて、事業規模の拡大や縮小、リモートワーク・テレワークへの切り替えにも柔軟に対応できるため、事業の成長ステージや働き方の変化にも合わせやすいのが大きな強みです。
一方、対面での打ち合わせスペースの確保や、従業員の常駐といった物理的な機能を必要とする場合には、従来型のオフィスの方が向いている場合もあります。このため、自社の事業形態や今後の運用スタイルに合わせて最適な選択をすることが重要です。
バーチャルオフィスを利用した開業の流れ
バーチャルオフィス選びのポイント
バーチャルオフィスを選ぶ際は、単に「住所を借りる」だけでなく、さまざまな観点から総合的にサービスを比較することが大切です。まずチェックしたいのは、希望するエリア・住所で法人登記が可能かどうか。サービスによっては、郵便受けのみや登記不可のプランもあるため、法人登記や営業所登録を考えている場合は必ず事前確認が必要です。
次に重要なのは、郵便物の受け取り・転送や電話応対、会議室利用など、付帯サービスの内容と料金です。特に、ビジネスの規模や用途によって必要となるサービスは異なるため、自分のビジネススタイルにマッチしたサービスを選びましょう。また、料金体系も月額固定だけでなく、オプションや従量課金制の場合があるため、総額でいくらになるか確認しておくこともポイントです。
さらに、運営会社の信頼性や実績も大切です。歴史のある運営会社や実際の利用者の口コミ、サポート体制なども参考にしましょう。セキュリティやプライバシー対策、トラブル時の対応もチェックしておくと安心です。
契約から利用開始までの手順
バーチャルオフィスの利用を決めたら、まずは希望する住所・プランを選択し、申し込み手続きを行います。多くの場合、Webサイトからオンラインで申込が可能です。申込時には、本人確認書類(運転免許証・パスポートなど)や法人の場合は登記簿謄本・印鑑証明書などの提出が求められます。
書類審査や本人確認を経て、審査が通れば契約成立となり、利用開始日が決定されます。支払い方法はクレジットカードや銀行振込などが一般的です。利用開始後は、付与されたビジネス住所や電話番号を登記や名刺、ホームページ等で利用できるようになります。
また、郵便物の受け取りや転送サービスも設定され、必要に応じて会議室やレンタルスペースの予約も行えるようになります。初回利用時に現地訪問やオリエンテーションがあるサービスも一部存在します。
開業届の提出方法と注意点
個人事業主やフリーランスがバーチャルオフィスを利用して開業する場合、税務署への開業届の提出が必要です。開業届には「事業所所在地」を記載する欄があるため、契約したバーチャルオフィスの住所を正確に記載します。
この際、バーチャルオフィスの利用証明書や契約書のコピーを用意しておくと、万が一税務署から実態確認を求められた場合もスムーズに対応できます。バーチャルオフィスの住所で開業届を出す場合、まれに「自宅か実際の作業場所も記載してください」と指示されることがあるため、個別のケースで対応が異なる点も念頭に置きましょう。
また、事業内容によってはバーチャルオフィスの住所では許可や登録が下りない場合があるので、事前に管轄の役所や関係機関に確認することが大切です。
法人登記に必要な書類と手続き
バーチャルオフィスの住所で法人登記を行う場合、一般的な会社設立手続きと同様に、定款や登記申請書、代表者の印鑑証明書、取締役の就任承諾書などが必要です。加えて、バーチャルオフィスの「利用契約書」や「利用許可証明書」を提出するよう求められることがあります。
登記申請は法務局への書類提出で行われ、記載内容に不備がなければおよそ1週間~10日程度で登記完了となります。バーチャルオフィスの運営会社によっては、会社設立や登記のサポートを行っている場合も多いので、初めて会社設立を行う場合はオプションサービスの活用も検討しましょう。
ただし、一部の自治体や法務局ではバーチャルオフィスの住所による登記を厳格に審査する場合があります。実体性や利用目的、事業内容などに関する追加資料や説明を求められるケースもあるため、事前に運営会社や司法書士に相談しておくと安心です。
郵便物・電話対応サービスの活用
バーチャルオフィスの大きな特徴として、郵便物の受け取りや転送、電話応対サービスなどのオプションがあります。これらは、物理的なオフィスに常駐しなくても日常業務をスムーズに行うために非常に役立ちます。
郵便物の受け取りは、オフィス宛に届いた書類や荷物を、毎週または毎月まとめて自宅や指定先に転送してもらえるサービスが一般的です。重要な書類や荷物が届いた場合、即日通知やスキャンデータの送付を行ってくれるサービスもあります。
また、ビジネス用の電話番号やFAX番号を付与され、専任のオペレーターによる電話応対や、指定先への転送サービスも選択できます。これにより、実際にオフィスにいなくても、信頼感のある対応や顧客管理が可能となります。
さらに、必要に応じて会議室や応接スペースを予約・利用できるバーチャルオフィスも増えており、来客時や打ち合わせ、面接などの一時的な用途にも柔軟に対応できるのが強みです。
バーチャルオフィスで開業する場合の注意点
法人登記の制限と注意点
バーチャルオフィスを使った法人登記には、見落としがちな制限や注意点があります。まず、すべてのバーチャルオフィスが「法人登記可能」なわけではありません。サービスによっては「郵便受け取り専用」や「個人利用限定」などのプランが存在し、法人登記や営業所登録が禁止されている場合もあります。申し込み前に、登記利用が可能かどうか必ず運営会社に確認しましょう。
さらに、登記を認めていない自治体や、法務局による個別の審査が厳しいエリアも存在します。たとえば、東京都心部の一部地域では、登記利用の増加に伴い「実体確認」や「事業目的確認」などの書類提出を求められるケースがあります。加えて、利用契約書や利用証明書の提出を指示されることが多いため、必要書類の準備は余裕を持って行いましょう。
また、業種によってはバーチャルオフィスでの登記が認められない場合があるので注意が必要です。例えば、士業や建設業、宅建業、古物商などは、行政の許認可取得時に「常駐の実体が必要」とされることがあり、バーチャルオフィスでの開業が難しいケースもあります。事前に自分の業種でバーチャルオフィスが使えるか、自治体や監督官庁に相談しておくと安心です。
バーチャルオフィスが使えない業種・業態
バーチャルオフィスが使えない業種や業態には、法令や行政指導により物理的なオフィススペースやスタッフの常駐が義務付けられているものがあります。具体的には、下記のような業種が代表的です。
- 士業(弁護士、司法書士、税理士、社会保険労務士など)
- 建設業(建設業許可取得時の事務所要件あり)
- 宅地建物取引業(宅建業免許には事務所と専任宅建士の常駐要件)
- 古物商(公安委員会の営業所実体要件あり)
- 労働者派遣業や有料職業紹介業(一部は要件を満たせば可能)
これらの業種では、バーチャルオフィスの住所での登記や営業許可が認められない、もしくは認可が下りないことがあります。逆に、IT系、コンサルティング、クリエイティブ、ECサイト運営など、実体事務所を必要としない業態はバーチャルオフィスとの相性が良いと言えるでしょう。
また、最近は副業・兼業での利用も増えていますが、本業で許認可や実体確認が必要な場合には注意が必要です。万一、業種制限を見落としたままバーチャルオフィスを利用してしまうと、最悪の場合は許認可の取り消しや行政指導を受けることもあります。契約前には必ず、利用目的に合った住所利用が可能かを運営会社や行政に確認してください。
取引先・金融機関からの信頼性
バーチャルオフィスの利用は、コスト削減や利便性向上の反面、「信頼性」の観点で課題が残る場合もあります。特に、新規の取引先や金融機関、融資審査の場面では、「バーチャルオフィス=実体がない」と判断され、法人銀行口座の開設や取引契約の審査に影響するケースがあります。
実際、金融機関によっては「バーチャルオフィスの住所では法人口座を開設できない」と明記しているところもあり、開業直後の資金調達や決済口座の開設が難航することも珍しくありません。加えて、商工会議所や助成金、補助金申請時にも「実態確認」が求められる場合があるため、事業の拡大を考えている場合には慎重な判断が必要です。
そのため、バーチャルオフィス利用時は、事業内容や活動実態を明確に説明できるよう、ホームページやSNSの運用、業務実績の公開など「見える化」にも力を入れておくと信頼性向上につながります。また、対面打ち合わせやリアル会議室の利用が可能なサービスを併用するなど、信用不安を払拭する工夫も大切です。
実際にバーチャルオフィスで開業した人の失敗事例
バーチャルオフィスでの開業には多くのメリットがありますが、失敗事例も存在します。代表的なケースとして、以下のようなトラブルが報告されています。
- 銀行口座が開設できず、事業運営に支障が出た
- 行政から事業実態を疑われ、登記や許認可が認められなかった
- 取引先からの信用を得られず、商談が進まなかった
- 郵便物の紛失や転送遅延など、事務手続きでトラブルが発生
- サービスの解約や移転手続きが煩雑で、追加コストが発生した
特に多いのが「バーチャルオフィスの住所で銀行口座が作れない」というトラブルです。銀行によって審査基準が異なり、バーチャルオフィス利用者への審査は厳しい傾向があります。また、登記や行政手続きで実体確認を求められた際、事業の実態やスタッフの所在が不明確な場合は、手続きがストップしてしまうこともあります。
こうした失敗を防ぐためには、事前の情報収集と確認、実体を証明するための資料作成、必要に応じて司法書士や行政書士などの専門家に相談するなど、慎重な準備が不可欠です。また、バーチャルオフィス選びや利用規約の確認を徹底し、自社のビジネスモデルに合った使い方を心掛けましょう。
バーチャルオフィス開業におすすめのサービス
人気バーチャルオフィスの比較ポイント
バーチャルオフィスのサービスは多数ありますが、比較のポイントを整理すると、主に以下の要素が重要です。
- 法人登記の可否と実績
- サービス拠点の立地(都心一等地・主要都市・地方など)
- 月額料金や初期費用の明瞭さ
- 郵便物・電話対応など付帯サービスの充実度
- 会議室やレンタルスペースの有無と利用条件
- サポート体制(問い合わせ対応、トラブル時のフォロー)
- セキュリティや個人情報管理の体制
- 契約手続きや解約時の柔軟性
たとえば、法人登記や営業所登録を考えている場合は、登記実績や取引先からの信頼性が高いサービスを選ぶことが重要です。利用者の口コミやランキング、運営年数も参考にして比較しましょう。
法人登記OKなバーチャルオフィスの選び方
法人登記が可能かどうかはバーチャルオフィス選びで最重要ポイントです。登記可と明記しているサービスでも、プランによって制限があったり、追加料金が必要な場合もあるため、詳細まで確認しましょう。
また、登記住所の表記方法や看板表示の有無、郵便物の取扱いや緊急連絡時の対応なども重要です。実際の利用例や他社事例を調べると、利用イメージがつかみやすくなります。
サービスごとに「登記利用に強い」「個人利用中心」など特色があるため、自社のビジネスモデルや今後の運用計画に合ったプランを選ぶことが大切です。事前に問い合わせて、「自社の業種・用途で利用できるか」「審査基準や必要書類」などを確認しておきましょう。
都心型と地方型バーチャルオフィスの違い
バーチャルオフィスには「都心一等地タイプ」と「地方都市・郊外タイプ」があります。
都心型のバーチャルオフィスは、東京・大阪・名古屋など大都市の一等地住所が手に入るのが特徴で、名刺やホームページでの「見栄え」「信用力」が高まります。取引先や顧客に与える印象を重視する場合や、全国展開を視野に入れた事業には都心型が向いています。
一方、地方型・郊外型のバーチャルオフィスは、月額料金が安く、独自の地域密着サービスを提供していることが多いです。地方企業や地元密着型のビジネス、副業やスモールビジネスにはコストパフォーマンスが魅力です。
どちらを選ぶかは、ビジネスモデルやターゲット層、事業拡大の方針によって判断しましょう。なお、都心型は利用者数が多いため、同一住所の企業が多い点や審査が厳しめな傾向もあるので、その点も考慮してください。
料金・サービス内容の比較表
バーチャルオフィスの料金はサービスごとに大きく異なります。
主な比較ポイントは以下です。
- 月額基本料金(住所利用のみ/法人登記プラン)
- 初期費用や登録料
- 郵便物転送サービス(回数・送料・保管料)
- 電話番号利用・転送・代行サービス
- 会議室利用の有無・時間単価
- オプションサービス(FAX、法人設立サポート、秘書代行など)
- 解約手数料・最低利用期間
複数社のサービス内容や料金を一覧にまとめて比較することで、自分に最適なプランを選びやすくなります。初期費用の安さだけでなく、必要なサービスや将来的な利用拡大を見越してコストパフォーマンスをチェックするのがコツです。
最近は、比較サイトやランキングサイトでもバーチャルオフィス各社の料金やサービスを一覧化しているため、実際の利用者の声や詳細情報も参考に、慎重に選択しましょう。
バーチャルオフィス開業後にやるべきこと
銀行口座開設のポイントと注意点
バーチャルオフィスで開業した後、最初に直面するのが「銀行口座開設」です。多くの事業者がこのタイミングでつまずきやすいポイントですが、バーチャルオフィスの住所では法人口座の審査が厳しい金融機関が増えているのが現状です。理由は「実体の確認が困難」「一部で詐欺的利用があった」など、社会的背景があります。
口座開設をスムーズに進めるためには、銀行側に「事業の実体があること」をしっかり説明・証明できる準備が不可欠です。たとえば、以下のような書類や情報を用意しましょう。
- ホームページやネットショップ等、ビジネスの実態が分かる資料
- 事業計画書や具体的な営業内容
- 契約書や見積書、請求書などの取引証跡
- バーチャルオフィスの利用契約書、郵便物の転送実績
メガバンクや都市銀行よりも、ネット銀行や地銀、信用金庫などの方が比較的柔軟に対応してくれる傾向があります。また、バーチャルオフィス運営会社によっては「銀行口座開設サポート」を提供している場合もあるので、こうしたサービスを活用するのもおすすめです。
いずれにせよ、バーチャルオフィスを利用する場合は「審査に時間がかかる」「追加資料の提出を求められる」などを想定し、余裕を持って手続きを進めましょう。
ホームページ・名刺の住所表記
開業後、ビジネスをスタートさせるにあたり、ホームページや名刺、SNS等に記載する「住所」は信頼感を左右する大事なポイントです。バーチャルオフィスの住所を使う場合でも、運営会社から指定された表記方法や注意点を必ず守る必要があります。
たとえば、会社名・登記住所・部屋番号などを正確に記載しないと、郵便物が届かなかったり、信用調査で「実体不明」とみなされることもあります。また、バーチャルオフィスを利用していることを明記する義務はありませんが、名刺やサイト上で「完全な物理オフィス」と誤解される表現はトラブルの元になるため避けましょう。
最近では、オンラインショップや個人事業主でもバーチャルオフィス住所を利用するケースが増えていますが、消費者や取引先に安心感を与えるためにも、連絡先電話番号や問い合わせフォームを併記するなど、複数の連絡手段を持つことも重要です。
開業後の税務・社会保険手続き
バーチャルオフィスで開業した場合も、税務や社会保険の手続きは通常の事業所と同じく必要です。開業届や法人設立届出書の提出後、税務署や都道府県税事務所、市区町村役場などに対し、必要な書類を漏れなく提出しましょう。
特に社会保険や労働保険の適用を受ける場合は、「事業所の実体」について確認されることがあります。たとえば、従業員を雇用する場合や、複数のスタッフが出入りするビジネスでは、バーチャルオフィス単体だと手続きが進まないことも。スタッフの労働実態や業務場所について説明できるように準備しておきましょう。
また、税理士や社労士と顧問契約を結んでおくと、こうした実務手続きがスムーズに進みやすくなります。バーチャルオフィスの住所での登録や手続きが問題ないか、事前に専門家に相談しておくと安心です。
トラブル事例と対策
バーチャルオフィスを活用して開業した後も、さまざまなトラブルが起こり得ます。よくある事例としては以下のようなものが挙げられます。
- 郵便物の遅延や紛失(再発防止のため、配達通知や受け取り履歴をこまめに確認)
- バーチャルオフィスのサービス終了や移転による住所変更(早めの情報収集とバックアップ計画が大切)
- 取引先や顧客から「実体がない」などの不信感を持たれる(ホームページやSNSで事業実態を積極的に発信)
- 金融機関から追加資料の提出を求められる、審査が通らない(準備書類の徹底、複数の銀行で並行申請)
万が一、郵便物や通知のトラブルが起きた場合は、すぐにバーチャルオフィスの運営会社に連絡し、経緯や対応策を確認しましょう。住所変更やサービス停止が決定した場合は、早急に新たなオフィスサービスの契約・手続きを進め、取引先や関係各所への告知も怠らないようにしましょう。
バーチャルオフィスで開業する人に多い質問Q&A
本店所在地はバーチャルオフィスでOK?
本店所在地にバーチャルオフィスの住所を利用して登記することは、多くのケースで認められています。実際、スタートアップ企業や個人事業主の多くがバーチャルオフィス住所を本店所在地として登録し、事業を運営しています。
ただし、先述したように一部の業種や自治体、金融機関によっては「実体のないオフィス」と判断されることがあり、追加資料や現地確認を求められることがあります。契約時に必ず登記可能かどうかを運営会社に確認し、必要に応じて「利用証明書」などを取得できるか確認しておきましょう。
また、事業拡大やスタッフ雇用、店舗展開を予定している場合は、将来的な本店所在地の変更も視野に入れておくと柔軟に対応できます。
郵便物の受け取りや転送はどうなる?
バーチャルオフィスを利用すると、事業宛に届いた郵便物や荷物はオフィス運営会社が一時保管し、定期的または都度、指定した住所に転送してくれるのが一般的です。転送頻度や手数料はサービスごとに異なりますので、事前に確認しましょう。
重要書類や宅配便などは「到着通知」や「即日転送」に対応しているケースも増えています。一方で、郵便物の受け取り時間や荷物の種類(クール便・大型荷物など)によっては、受け取りに制限がある場合もあります。
また、郵便物の紛失や誤配といったリスクもゼロではありません。大切な書類や契約書が届く予定がある場合は、事前にオフィス運営会社と連携し、追跡番号や受け取り方法をしっかり確認しておくと安心です。
どんな業種でもバーチャルオフィス開業できる?
多くの業種でバーチャルオフィスの活用は可能ですが、すべての業種で制限なく利用できるわけではありません。
前述の通り、士業、建設業、宅建業、古物商などの「物理的な事務所要件」が法律で定められている業種は、バーチャルオフィスでの登記や許認可取得が難しいです。
また、医療系や福祉系、労働者派遣業なども、現地事務所や人員配置、設備要件が求められるため注意が必要です。自分の事業が該当しないか、開業前に必ず調べておきましょう。
逆に、IT系、コンサル、EC運営、クリエイティブ業、副業や個人事業主の多くは、バーチャルオフィスと非常に相性が良く、コスト・効率面の大きなメリットを享受できます。
事業所の実体確認や現地調査について
バーチャルオフィスを本店所在地として利用する場合、金融機関や行政、助成金申請時などで「実体確認」や「現地調査」が行われる場合があります。
主な調査内容としては、
- 実際に事業運営が行われているか
- オフィスに看板や表札があるか
- 従業員や設備の有無
- 事業実態の証拠書類の提示
などが求められることがあります。バーチャルオフィスの場合、通常は常駐スタッフがいないため、運営会社に依頼して「利用証明書」や「登記簿記載の正当性」を補足資料として提出するのが一般的です。
審査や調査の結果、追加で物理的な事務所が必要になる場合もありますので、各種申請や融資、補助金活用を予定している場合は事前にリスクを把握しておきましょう。
バーチャルオフィス開業の体験談・口コミ
実際に開業した人の声
実際にバーチャルオフィスを利用して開業した方々からは、「コストを大きく抑えられた」「住所が都心一等地で信頼感が増した」などの肯定的な意見が多く聞かれます。
たとえば、地方在住のフリーランスが東京のバーチャルオフィスを利用して、全国クライアントにアピールしやすくなった例や、独立直後のスタートアップが初期費用を大幅に節約できたという声も。
一方で、「銀行口座の開設が難航した」「取引先から事務所訪問の希望があり困った」など、バーチャルオフィス特有の悩みも多く挙げられています。
バーチャルオフィス利用の満足点・不満点
【満足点】
- 家賃や光熱費がかからず、資金繰りに余裕が持てた
- 都心住所を名刺・Webに記載でき、取引先への信頼感が増した
- 郵便物や電話応対サービスが便利で時間を効率的に使える
- リモートワークや地方拠点との併用がしやすい
【不満点・注意点】
- 口座開設や助成金申請などで「事業の実体」証明が求められる
- 郵便物の受け取り遅延や紛失、対応の柔軟性不足
- 会議室や作業スペースの予約が混み合うことがある
- サービス解約や住所変更手続きに手間がかかる場合がある
開業に失敗しないためのアドバイス
バーチャルオフィスを活用した開業で失敗しないためには、何よりも「事前の情報収集」と「利用目的の明確化」が大切です。
登記や許認可、銀行口座など、各種手続きでバーチャルオフィスが使えるかどうか、必ず事前に確認しましょう。必要に応じて専門家(司法書士、行政書士、税理士など)への相談も有効です。
また、トラブルが起きた場合に備えて、重要な郵便物の受け取りや転送、契約内容の細かな部分も確認を怠らないことが大切です。サービス内容や料金、解約手数料などを比較し、自分の事業スタイルに合ったバーチャルオフィスを選ぶことで、開業後のトラブルや後悔を最小限に抑えることができます。